短期の暗号資産トレードでは、多くのトレーダーが次のような問題に直面します。
トレンドが出始めたときには乗り遅れ、追いかけてエントリーすると反転に遭いやすい。
その根本原因は、多くの場合「判断ミス」ではなく、シグナルが再現できず、ルールが明確でないことにあります。

モメンタム戦略の価値は、
明確な条件 + 連続的に検証可能な構造へ分解できる点にあり、
システム化・量化に非常に適しています。

本記事では、二本の移動平均線 + RSI を中心に、
短期モメンタム戦略をどのように実行可能なロジックへ落とし込むかを示し、
複数言語での実装例を紹介します。

一、戦略ロジックの定量的分解

1. 指標定義

  • 短期線:MA(例:5期間 単純移動平均)
  • 長期線:EMA(例:20期間 指数移動平均)
  • RSI:14期間

2. ロング・モメンタム成立の必要条件

「なんとなくの感覚」ではなく、
すべて同時に満たす条件としてシグナルを定義します。

  • MA > EMA(トレンド方向)
  • 現在のローソク足の終値 > MA かつ > EMA
  • RSI ∈ [50, 70](トレンドの強さを示し、極端な買われ過ぎを避ける)
  • レンジ相場でないこと(任意のフィルタ)

ショート条件は、これと完全に対称です。

二、Python サンプル(戦略バックテスト / クイック検証)

量的分析、バックテスト、プロトタイプ検証に適しています。

import pandas as pd
import ta

def momentum_signal(df):
    df['ma'] = df['close'].rolling(5).mean()
    df['ema'] = df['close'].ewm(span=20).mean()
    df['rsi'] = ta.momentum.RSIIndicator(df['close'], window=14).rsi()

    long_cond = (
        (df['ma'] > df['ema']) &
        (df['close'] > df['ma']) &
        (df['close'] > df['ema']) &
        (df['rsi'] >= 50) &
        (df['rsi'] <= 70)
    )

    short_cond = (
        (df['ma'] < df['ema']) &
        (df['close'] < df['ma']) &
        (df['close'] < df['ema']) &
        (df['rsi'] >= 30) &
        (df['rsi'] <= 50)
    )

    df['signal'] = 0
    df.loc[long_cond, 'signal'] = 1
    df.loc[short_cond, 'signal'] = -1

    return df

技術的ポイント

  • シグナルは離散値(-1 / 0 / 1)で表現し、回測や統計処理が容易
  • RSI は極値を追わず、レンジ相場での誤発火を減らす
  • 分足データを直接用いてスライディングウィンドウ回測が可能

三、Java サンプル(リアルタイム戦略 / 取引システム)

マッチングエンジン、リスク管理、リアルタイムシグナルモジュール向け。

public boolean isLongSignal(
        double close,
        double ma,
        double ema,
        double rsi
) {
    return ma > ema
        && close > ma
        && close > ema
        && rsi >= 50.0
        && rsi <= 70.0;
}

public boolean isShortSignal(
        double close,
        double ma,
        double ema,
        double rsi
) {
    return ma < ema
        && close < ma
        && close < ema
        && rsi >= 30.0
        && rsi <= 50.0;
}

エンジニアリング実践の提案

  • 移動平均と RSI の計算は指標モジュールに集約
  • Signal モジュールは条件判定のみに責務を限定
  • WebSocket 行情ストリームに接続し、K 足ごとに更新可能

四、C++ サンプル(低遅延 / 高頻度環境)

高パフォーマンスが求められる行情処理や戦略モジュール向け。

struct Bar {
    double close;
    double ma;
    double ema;
    double rsi;
};

bool longSignal(const Bar& b) {
    return b.ma > b.ema &&
           b.close > b.ma &&
           b.close > b.ema &&
           b.rsi >= 50.0 &&
           b.rsi <= 70.0;
}

bool shortSignal(const Bar& b) {
    return b.ma < b.ema &&
           b.close < b.ma &&
           b.close < b.ema &&
           b.rsi >= 30.0 &&
           b.rsi <= 50.0;
}

適用シナリオ

  • 行情 → 指標 → シグナル → 下流の執行処理
  • マッチングやリスク管理モジュールと疎結合
  • 戦略ファクター層の実装に非常に適している

五、リスク管理のプログラム化表現

多くの戦略が失敗する理由は、
シグナルが間違っているからではなく、明確な退出ルールがないためです。

代表的な方法:

  • ロングの損切り:直近の確定足の EMA
  • 固定リスクリワード比:1 : 1.5 または 1 : 2
  • 1 トレードあたりのリスク ≤ 資金の 1%〜2%

これらのルールもすべて、
人の判断に頼らず完全にプログラム化できます。

六、なぜモメンタム戦略はシステム化に向いているのか

  • 条件が明確で再現可能
  • 主観的判断に依存しない
  • 勝率や期待値を統計的に評価できる
  • 複数銘柄・複数時間軸で高速検証が可能

実運用やシミュレーションにおいて、
安定したリアルタイム行情と履歴データを組み合わせることで、

  • シグナルのリプレイ
  • パラメータ調整
  • 市場フェーズごとの比較

を短時間で実行できます。