
マーケットメイキングとは本質的に、約定確率とリスク管理のバランス調整です。
指値が保守的すぎれば約定せず、攻めすぎれば急変動で不利な約定を引き受けてしまいます。
この問題は暗号資産市場ではさらに顕著になります。
24時間市場で価格が動き続け、センチメントの変化も速く、オーダーブックがリアルタイムで需給を反映するためです。
そこで重要になる問いがこちらです:
オーダーブック不均衡度(Order Book Imbalance)を使って、マーケットメイキングの価格を動的に調整できるか?
1. マーケットメイキングは予測ではなく「価格付け」
マーケットメイキングを価格予測問題と捉えるのは誤解です。
実際には以下の3点が重要です:
- 現在価格周辺の流動性分布
- どちら側の注文がよりアグレッシブか
- どの価格帯なら約定しやすく、かつ不利な約定を避けられるか
暗号資産市場では、オーダーブックは最も直接的なマイクロストラクチャーデータです。
2. オーダーブック不均衡度(Order Book Imbalance)
一般的な定義は以下の通りです:
Order Imbalance = (Bid Volume – Ask Volume) / (Bid Volume + Ask Volume)
例えば深さ5〜10レベルで計算できます:
- 0より大きい:買い圧力が強い
- 0より小さい:売り圧力が強い
- 0付近:均衡状態
重要なのは方向予測ではなく、
どちら側の流動性が消費されやすいかを示す点です。
3. コア戦略:動的クォート調整
従来のマーケットメイクは以下のように固定的です:
Mid Price ± スプレッド / 2
しかし実際には市場は常に変化しています。
そこで次のように拡張します:
Bid Price = Mid – Spread/2 + α × Imbalance
Ask Price = Mid + Spread/2 + α × Imbalance
- α:攻撃性パラメータ
- Imbalance:オフセット方向
これにより、流動性圧力に応じた価格調整が可能になります。
4. オーダーブックからシグナルへの変換
この戦略にはリアルタイムの板情報が必須です。
WebSocketなどのリアルタイムデータフィードを使い、レベル2データを取得します。
(Pythonコード例は英語版と同様構造)
5. なぜ不均衡度が重要なのか
マーケットメイキング最大のリスクは**逆選択(Adverse Selection)**です。
オーダーブック不均衡度は以下に役立ちます:
1. 流動性の変化を早期検知
- 買い注文の急増
- 売り注文の急減
2. 不利な側への指値回避
売り圧力が強いときに買い指値を攻めると損失リスクが高まります。
3. 約定品質の向上
流動性の方向に沿った価格調整が可能になります。
6. 発展:ボラティリティフィルタ
不均衡度単体ではノイズが大きいため、以下を追加します:
if volatility > threshold:
alpha *= 0.5
- 高ボラ → 保守的
- 低ボラ → 積極的
7. マルチアセット拡張
BTC、ETH、FX、ゴールドなど複数資産を接続すると:
- 資産間の不均衡比較
- ボラティリティ正規化
- 資金フロー移動の検出
例:
- BTC買い圧力強 + ETH弱 → 資金ローテーション
- ゴールド上昇 + ドル下落 → マクロトレンド
8. 本質:マーケットメイキングは市場の呼吸を読むこと
オーダーブックは単なるデータではなく、市場の状態そのものです。
- 買いの集中 = 強気圧力
- 売りの撤退 = 流動性低下
- 不均衡 = センチメント差分
最終的にマーケットメイキングは予測ではなく、リアルタイム流動性に基づき、価格を継続的に補正する行為へと進化します。


